「コロナに負けないぞ?」綾 幸子

コロナになるちょっと前から、それまで洋楽ばかり聴いていたのが、

youtubeで落語を聴いたのをきっかけに、

遅れて来た古今亭志ん朝さんブームが私に訪れました。

初めて聴いたのが「芝浜」で、

おかみさんが亭主を起こすのに「お前さん!」と呼ぶのではなくて

「熊さん」と名前で呼んで起こすのが、

「ああ、惚れてるんだろうな、きれいな人なんだろうな」と、

パッと目の前に世界が広がって、もう、虜です。

youtubeを検索しているうちに出囃子ってかっこいいなあ、

志ん朝さんの出囃子「老松」が弾けるようになりたいと思っていたら、

なぜか縁あって長唄三味線を習うようになりました。

やっとお稽古を始めて、少ししたらコロナです。

しばらくお稽古もお休みになりました。

コロナで楽器を始めたという方も多いと思うのですが、

練習していると暗いニュースのことなど考えていられないので、良いですよね。

私も三味線を出していると、

まるで時代劇の登場人物になったような気分になれて、助かりました。

そのうちお稽古も再開、夏のおさらい会も規模は小さくなりましたが、なんとかできました。

その間、三味線なんぞ、ひっぱたいているバヤイではないのにと思いつつ、

暗譜しないといけないので、

会で頭が真っ白になり弾けなくなるという悪夢にうなされながら、

練習していました。

待望の「老松」は長い曲で、出囃子部分だけ教えてもらいました。

間違えずに弾けた夜、志ん朝さんに上野の鰻屋で会うという夢を見ました。

でもおずおずしていたら、志ん朝さんは帰ってしまい、結局サインはもらえず、がっくりして

目覚めるという良かったんだか悪かったんだか、、の夢でした。

結局、コロナという現実から三味線のお稽古で逃げてるだけなのかもしれませんが、

だいぶ暗い気持ちから抜けられたように思います。